婚カチュ。


「はい? デートですか? 誰と」

「僕とです」

「え! なんでですか」
 

意表を衝かれて目を丸めるわたしに、アドバイザーは淡々と説明する。


「シミュレーションデート、というプログラムがあります。異性との交際に慣れていない方のための、実践講習のようなものです」

「え、わたし別に」

「いつがよろしいですか」
 

有無を言わさぬ口調でどんどん話を進められていく。
広瀬さんは微笑んでいるけれど、やっぱりどこか怒っているように感じられる。

曜日と待ち合わせ場所を強引に決めると、彼は最後に極上の微笑を浮かべた。


「ということで今週末、よろしくお願いします」

「ええと……はい」
 

美男子の微笑みは、やっぱり空恐ろしいものだと思った。










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