婚カチュ。
駅のそばのコインパーキングに足を踏み入れる。
相談所で座って向き合っているときは小柄な男性だと思っていたけれど、顔が小さいせいでそう見えていただけかもしれない。
目の前の背中はがっしりと引き締まっていた。わたしの理想には及ばないけれど、身長も日本の成人男性の平均を超えているだろう。
道行く女性が何度か視線をよこしてきたことにわたしは気付いていた。
広瀬さんはきっと女性にモテる。そんな彼と並んで歩いているわたしは、いったいどう見られているんだろうか。
シミュレーションデートなのだから、恋人に見られなければダメなんだけど。
満車のコインパークのなかで彼が乗っている車がどれなのか、自然と視線がさまよった。
どんな車に乗っているかは、その人間のバロメーターになる。
広瀬さんはわたしよりいくつか若そうだけれど、婚活アドバイザーだけあっておしゃれだし身なりがいい。
意外とスポーツカーに乗っていたりして。
胸を高鳴らせながら歩いていると、駐車場の奥のスペースに止まっている車に目がいった。
ミッドナイトブルーのボディは特徴ある流線型で、車に明るくないわたしでもひと目でわかる、その神々しさは――
ポルシェだ。