婚カチュ。
「僕は中学の体育の授業でちょっとやった程度です。前から興味はあったんで、せっかくだから二ノ宮さんに教えてもらおうと思って。お手柔らかにお願いします」
小さく笑って黄色のテニスボールをわたしに手渡す。
ジャージ姿のせいかメガネをかけていないせいか、いつも感じるような威圧感がない。太陽の下で見ると広瀬さんはとてもさわやかな好青年にしか見えなかった。
「それじゃ、軽く打ち合いからはじめましょう。よろしくお願いします、先生」
そう言ってコートの向こう側に走っていく姿がなんだかまぶしかった。