婚カチュ。
「違くて、ちょっと、休憩しませんか」
「え?」
「二ノ宮さん、激しすぎ」
整った顔に汗が滲んでいる。漂うフェロモンに思わず後ずさった。
顔のきれいな男が額に汗して喘ぐ姿は、なんとも生々しい。
「遊びサークルじゃなかったんですか」
「ええ不真面目なサークルでした。だから、わたしはひとりで浮いていたというか」
広瀬さんはベンチに座ってスポーツドリンクを仰ぎ、わたしに「飲みますか」とペットボトルをよこす。
彼が口をつけたものだけれど不快な気持ちはなかった。
これはデートなのだ、と思った。
お客様相手だったなら、きっと別々の飲み物を用意したに違いない。
間接キスに心を震わせるなんて、いつぶりだろう。
いつからか、胸の奥底に消えてしまっていた華やいだ感情がゆっくりと目覚めていくような気がした。
「二ノ宮さんていちいち意外すぎますね」
タオルで汗をふきながら、切れ長の目がわたしを見る。