婚カチュ。
「意外、ですか?」
「お相手の希望条件のこととかでヘタレたことばかり言ってたので、根性を叩き直してやろうかと思ってたんですよ」
「……なんかひどいですね」
「はは、叩き直されたのは俺のほうでした」
汗をかいてすっきりしたように、広瀬さんは快活に笑う。
「あなたはきっと、無自覚に周りを振り回すタイプでしょうね」
情け容赦のない鬼アドバイザーとは思えないくらい、今日の広瀬さんは笑顔を見せる。
いつもと違う様子にわたしの心臓は終始落ち着かなかった。
不自然な胸の高まりに、自分で戸惑う。
「きっと言い寄られても気付かないうちに相手を諦めさせてると思いますよ。それでいて出会いがないとか言っちゃって。本当に面倒なひとだ」