婚カチュ。
どうも、と受け取って車を降りた。
「今日はありがとうございました。僕は楽しかったです」
「わたしも、楽しかったです」
素直に口にすると、彼が運転席から微笑んだ。
「頑張ってお相手を見つけましょう。二ノ宮さんの良さをわかってくれる人は絶対にいますから」
アドバイザーの言葉が引っかかる。
「わたしの良さ?」
彼は端正な顔をやさしく崩した。
「あなたのいいところは、素直なところです」
今日の格好、可愛かったですよと言い残すと、白い車は細い通りを走りさった。
立ちつくしてそれを見送る。
緋色のテールライトが、角を折れて見えなくなる。
自分の頬が赤く染まっていることに気が付いたのは、自宅に着いて鏡を見てからだった。