婚カチュ。

3  ◇ ◇ ◇


 
いつものようにテナントビルの5階で降り、色とりどりの花に囲まれた扉をくぐると、すこし不機嫌そうなわたしの王子様が出迎えに来てくれる。


「このあいだのお見合い合コンで、いきなりやらかしたそうですね、二ノ宮さん」
 

レンズの奥の目が冷たく細まり、背筋が震えた。彼にまっすぐ見つめられると、つい目を逸らしてしまう。


「会員の女にドリンクをひっかけられた、とクレームが入りましたよ」
 

面談室の椅子に腰掛けながら話す広瀬さんの声は、怒っても悲しんでもいなかった。むしろ楽しんでいるように聞こえる。


「すみません。なんか、ムカついちゃって」

「まあ、だいたい想像はつきますけど」
 

ノートパソコンを広げながら、


「ここだけの話、あの会員男性には社長も手を焼いてるんですよ」

「桜田さんが?」
 

驚いて目を向けると、彼は薄く笑った。

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