婚カチュ。
わたしが25歳のころに比べると、広瀬さんはやたらと達観しているように見えていたけれど、彼の黒い瞳にはやっぱり25歳の若者相応の少年っぽさが宿っている。
彼自身、これまで落ち着かざるをえない状況に身を置かれてきたのだろう。
いろんな想いを抱えて早く大人になろうともがいている幼い少年の姿が頭のなかに思い浮かんだ。
「メガネ」
「は?」
わたしはテーブルに置かれた眼鏡を指差した。
「運転するときはかけてませんでしたよね。広瀬さん、普段はメガネをしないんじゃないですか? どうして相談所ではかけてるんです?」
わたしの素朴な疑問に「ああ」とテーブルのそれを取り上げる。
「ええと、一種の変装というか。オン・オフの切り替えのためというか」
首を捻るわたしに、彼は曖昧に笑う。
「平たく言えば、コーディネーターの役割に没頭するためのアイテムです」
「没頭するため?」
なんとなく濁された気分になりながら、彼を見つめる。