婚カチュ。
「あらー、やっぱり」
私から離れると桜田さんは仕方ないわね、というように細い腕を組んだ。
不意に漂った威圧感に気持ちが焦る。
経営者目線で考えたら、相談所の会員がアドバイザーに恋をしていいわけがない。
「な、なに言ってるんですか、そんなわけ」
否定しようとした瞬間、桜田さんは白い歯を覗かせて不敵な微笑を浮かべた。
「だめよ、嘘ついても」
すべてを見透かしたような表情に、胸が震える。
「紫衣ちゃんは素直すぎるの。態度見てれば丸分かりよ」
そう言って、わたしと広瀬さんが話をしていた個室に目を向ける。
ブラインドで隠されていなかったガラスの部屋は外から丸見えだ。中央に置かれた丸テーブルと、向き合う2脚の椅子と、その距離感も。
「紫衣ちゃんの智也くんを見る目、おもいきり女だったわよ」
「あの、違うんです。べつにわたし」