【企画】魔法が醒めるとき



「ちょっとー、あの人誰なの!?」


さっきまで自分の世界に入っていた友人が、春に問いた出す。

それを気にしていないフリをしながら、耳を大きくして聞いているあたし。


「光君っていって、彼氏の大学の時の友達だよ」

「て事は26歳だよね? 素敵な人じゃーん。
で、職場は!?」

「確か広告代理店勤務って聞いたけど。
でもすっごく優しいし、顔もいいからモテるみたいだよ。って……」


春が話してる途中で、瞳をキラキラと輝かせる友人はその人がいる輪へと流れ込んでしまった。


「もうっ! 本当、あの子男好きだよね」


あたしの隣に来た春が小声で呟いた。

クスッと笑いながら、あたしも頷く。


「ま、月美にはあんな素敵な人も目に入らないか」

「え?」

「だって東吾さんと結婚するんだもんね」

「あ、あぁ、うん。まぁねぇ」


ワイングラスを持つ手に力が入った。


キッチンへと戻った春から視線をその人に戻すと、あたしはその人から目が逸らせなくなってしまった。
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