いとしいこどもたちに祝福を【後編】
そして、月虹で――兄への偽っていた感情と押し込めていた感情が、無い交ぜになって涙と共に一気に溢れ出した。

それはずっと感情を塞き止めていた、心の箍(たが)が外れたような感覚だった。

きっと変わったと評されるのは、そのせいだろう。

だから母を想う今も、溢れる涙を止めることが出来ない。

どうすれば母を救える?

どうすれば、母は眼を開けてくれる?

自分はもうこんなにも近くにいるのに、自分の帰りをずっと待っていた母に無事を伝えられないことが何よりも苦しい。

陸は母の掌を両手で包むと、祈るように頬を寄せた。

「母さん……」

――そのとき、弱々しくも掌を握り返されたような気がして陸は眼を見開いた。

「っ母さん…?!」

思わず身を乗り出すと、愛梨の長い睫毛がふわりと揺れた。

次いで、瞼がゆっくりと持ち上がると、現れた桜色の双眸がいとおしげにこちらを見つめる。

「りく…」

か細い声でそう呼ばれた瞬間、一度は治まりかけていた涙がまた溢れて止まらなくなった。

「母さん、おれっ…」

まるで幼い子供のように泣きじゃくる陸の頬に、愛梨は両手を添えて優しく撫でた。

「どうしたの……怖い夢を見たの…?」
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