神様と出会いました。
「まひろ、か…いい名前だね」

神様は顎に指を添えて軽く頷きなから私を見て微笑む。
名前を褒められることはよくあったが、まさか神様に褒められるとはなぁ。
神様って信じていいかもまだ定かではないけど。

「祖母が私につけてくれました」

「ほぉ…君のお祖母さんが」

神様は今度は目を細めて私を見た。
藍色の目が鋭くなる。
心の中まで見透かされるような気がした。
だが、そこで動揺するような自分ではなかった。
自慢ではないが、昔から態度だけはでかいのだ。
精神もそれなりに強くできている。
無言の空間が広がった気さえした。

「…よかったらおいで」

神様は私の頭をふわっと撫でると私に背を向け、お社に向かって歩き出した。
これは…お誘い、なのだろうか?
なにがなんだかわからないがとりあえずついて行ってみよう。
私も所詮は好奇心旺盛な子供心の残った奴なのかもしれない。

神様と小蒔は、お社の横を通り裏に回っていく。
あとについて行くとお社の裏口のようなところに来た。
神様は木の開き戸の前で私を手招きする。
私は呼ばれるがままに近づいた。
神様は開き戸に手をかけ、そこは静かに開かれた。

「あれ、思ったより広い」

開けた先は普通の家屋と同じように玄関だった。
え、お社そこまで大きくないよね?
まさか普通の家くらい中広いの?

「ここは御琴様がお作りになられた異空間だ」

「異空間?」

神様も小蒔も先にとっとと中に入るため、私も慌てて追うように中に入った。
上がると中は暗く、先が見えない状態だ。

「こわ…」

「今、明かりを灯しますね」

小蒔は手際よく蝋燭に火を灯していく。
私と神様、小蒔の周りだけがぼんやりと明るくなった。

「ここはね、私が創り出した外とは違う空間なんだ」

小蒔が先頭をきって歩く廊下で神様は私に説明する。
うーむ…ますますアニメチックだ。

「こちらです」

小蒔が襖開くとそこは畳の部屋だった。
真ん中に囲炉裏がある歴史の教科書のようなところ。

「座って」

神様は囲炉裏の近くに座布団を敷くと私に微笑んだ。
よく笑う人だな。

「あ、ありがとうございます…」

私は言われるがままにふかふかの座布団に座った。
じんわりと暖かい囲炉裏が体を温めていく。

「お茶をお持ちしますね」

「あ、お構いなく!」

部屋を去る小蒔に声をかけるも、小蒔はささっと部屋を後にした。
ほんとによくできた子だ。


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