揺れて恋は美しく
煌めく光りはカメラのフラッシュなのか、それとも様々な服を着こなしポーズを決める桐島なのか。後方の壁際で立ち尽くす美沙はその光景に見とれているようで、瞬きも忘れて瞳を輝かせ見いっている。
カメラの限度枚数に達する音がなり一時休憩になるが、桐島に駆け寄ったのは美沙ではなく別の関係者。桐島とその関係者が椅子に座ると取材が始まり、更に近付きにくい状況へと陥る。
ただ黙って見ているしかない美沙。
やがて再び撮影が始まるとスタッフの一人が美沙に声を掛け、美沙は落ち込んだ様子でドアを開けて出て行った。それを心配そうに横目で見ていた桐島は、撮影の一時中断を願い出て部屋から飛び出して行った。
静かな通路を力なく歩く美沙を見付けた桐島は駆け寄って声を掛ける
が、振り向いた美沙は思いの外明るく笑顔で、だが悲しい言葉を発して去って行った。

「居ちゃ、駄目なんだって」

桐島は美沙を追い掛けようとするがスタッフに呼び止められ、必死に説明と説得をしている間に美沙の姿が見えなくなってしまう。

曇り空の下、一人で歩く美沙。

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