初恋*
「へ、へぇ」
「へぇって。…もっと真剣に考えてくれよなぁ」
真剣にと言われても。
「へぇ」しか言葉が出てこなかったのは、あたしだって気の利かない女だなぁ。とは思うよ。
思うけど、さ。
好きな奴に、あたしの一番仲良しの友達が好きって言われて。
動揺しない人なんかいない。
「協力って言っても…出来ない」
「なんでだよ。沙希とお前仲良いじゃん」
「そ、そういうのは自分で何とかしなさいよっ」
また、憎まれ口。
本当、あたしって…バカ。
なんで奏多にそんな切なそうな顔をさせてるの。
仮にも好きな人のそんな切なそうな顔。
あぁ、奏多ーー
あたしはアンタが好きなのよ。
言いたいのに、口は鉛のように重たくて。
ただ、俯くことしか出来なくて。
「…じゃあね。また明日」
奏多に背中を向けて、自転車にまたがって思いっきりペダルを漕ぐことしか出来なかった。