君が嘘をついた理由。

一気に、抜ける肩の力。会いたいはずなのに。


なぜか、ほっとしている自分もいて、不思議な気分になる。

「お母さん、」


近寄ったお母さんはまだ眠ったまま。今日は、顔色がいい。

「陽太といつも会ってたんだね。今日は、もう帰った…?」


ぎゅっとお母さんの手を握る。

返事がないのは分かっている。


握った手が握り返されたことだってない。

今日もそれは変わらない。


ただ、今さっきまで外にいた私の手よりもはるかに暖かくて。






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