極上の他人


私の顔を両手で挟むと、気遣うように撫でては私の表情を探る。

「大丈夫か?黙っていて悪かった。俺は、誠吾先輩が心底愛して大切にしている史郁が訳のわからない男と見合いするなんてまずいと思って、それに、俺だって史郁とまた会いたくて、見合いを受けたんだ」

相変わらず私の反応を伺うような輝さんの口調に、どう返していいものかわからない。

輝さんが誠吾兄ちゃんの後輩だと知って、世の中って狭いんだなあと意味なく実感したり、輝さんの大学時代の様子を誠吾兄ちゃんが帰国した時にでも聞いてみたいなあとか。

どこか楽しんでいる自分が何だか意外で不思議だけれど、私の中では『やっぱり』と思える部分もある。

きっと、私の両親の現在の様子も、誠吾兄ちゃんから詳しく聞いているんだろう。

それを今私に言うなんて荒療治、誠吾兄ちゃんにはきっとできないことだろうけど。

輝さんは、泣き続ける私をどうしても慰めたくて、言ってしまったに違いない……。

「輝さん、この部屋に来たことがあるでしょ?」

疑問形で聞いているけれど、確信はある。

誠吾兄ちゃんが日本にいる間に、輝さんはこの部屋に来たことがあるはずだ。

この部屋に来た輝さんの様子から受ける違和感も、それを裏付ける。



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