極上の他人
私が興奮して泣き叫んでいた時、輝さんはそんな私をなだめようとして何度も誠吾兄ちゃんの名前を口にしていたことを思い出した。
弓香さんの名前も聞いたような気がする。
吐息すら感じる近い距離にある輝さんの瞳が恥ずかしくて、そらしそうになるのを堪えながら、視線で問う。
『誠吾兄ちゃんと、知り合いなの?』
ほんの少しだけ傾げた首の意味を、輝さんは受け止めてくれたようで、私を安心させるような笑顔を浮かべながら答えてくれた。
「俺の大学時代の先輩だ。誠吾先輩も、弓香先輩も、同じサークルで可愛がってもらった」
「大学が、一緒……」
「そうだ。学部は違ったけど、サークルで知り合って結構一緒に遊んでもらったな。当時から女の子に人気があったけど、弓香先輩一筋で真面目な誠吾先輩に憧れている後輩は多かった。まあ、俺もその一人だけど」
「……知らなかった」
「俺は、亜実さんから見合い写真を見せられた時、すぐに誠吾先輩のふみちゃんだって気づいたんだけど。黙っていて悪かった」
「嘘……」
小さく漏れた私の声に、輝さんは鋭く反応した。