極上の他人
お店で聞き慣れている輝さんの声とは違う声が妙にひっかかる。
輝さんも疲れてるのかな、と思いながら、意識して明るい声で答えた。
「毎日遅いわけではないんですけど、私、運良くとてもやりがいのある仕事に携わることができることになって、その打ち合わせで今日は遅かったんです」
『やりがい?』
「はい。私、展示場に建てる商品の仕様決めをすることになって、今はそのことで頭がいっぱいで」
『へえ……』
「今日も、一緒に仕事をする人たちと打ち合わせがあったんですけど、社内でもその販売実績で有名な営業マンの人やコンクールで入賞を重ねている設計の人とか。
刺激的な人ばかりと組ませてもらえることになって、ちょっと今晩は嬉しすぎて眠れそうにないんです」
特に詳しい内容を輝さんに聞かれたわけではないのに、私の口からは、次々と言葉が溢れてくる。
自分の言葉を自分で聞きながら、私はこの仕事を本当に楽しみにしているんだと改めて実感する。
新入社員でありながら、会社の新商品の売れ行きをある意味左右する案件に携わる事ができることへの喜びが、じわじわと溢れ出てとまらない。
一旦は落ち着いていた気持ちが再燃し、興奮する。