極上の他人
それでも、大好きな人から何度も「甘えろ」なんて言われて、それを拒み続けるほど強くはない。
これまで私はずっと、自分は一人で生きて行かなくてはいけない、その現実は変わらないと思っていた。
知らず知らず肩肘を張って、胸に溢れる不安に気付かないように過ごしていたとも気付かされる。
特に誠吾兄ちゃんがアメリカに行ってからは、しっかりしなくては、と言い聞かせながら必死に生きてきた。
そうしなければ、毎日を穏やかに過ごすことすらできないと、わかっていたから。
だから誰にも頼ることなく一人で頑張ってきたのに。
輝さんからそんな私の思い全てを崩してしまうような言葉ばかりをかけられて、これ以上どう強くなれば輝さんに甘えずにいられるんだろうか。
「ずるい……」
張りつめていた感情が、ぽろりと壊れていくのを感じながら、呟いた。
目の奥もじんわりと熱くなっていき、声の震えが隠せない。
「私が言われて嬉しい言葉ばかり言って、そうやって私を弱くして。ずるい。輝さんにとっては大したことのない言葉かもしれないけど、私は慣れてないから……どう答えていいか」
わからない。