極上の他人


「ひ、輝さん……」

私を掴んでいる輝さんの腕に力がこもり、私はそれ以上何も言えなくなる。

輝さんの視線だけで口を閉じる私に、艶ちゃんはくすっと笑い、相変わらず面白がっている。

「誠吾先輩、お久しぶりです。はい、輝です。お元気ですか?」

『お、お元気ですかじゃねえだろっ。お、お見合い、お見合いだと?お前、俺がまだ待てって言ってたのに、どうしてそんなに焦るんだ』

「いえ、俺はじっと、時が来るのを待っていたんですけど、意外な縁がありまして、史郁から俺のもとに飛び込んできたというか、店まで来てくれたんです。たまたまそれがお見合いだっただけで」

『飛び込んでって、史郁がお前を知ってるわけないだろ?俺があれだけ慎重にお前と会わせないように……』

「そうですね、俺ももうしばらくは誠吾先輩の言うとおり静かに待っている予定だったんですけど、なかなか思うように事は進みませんよ。いろいろと。……そう、いろいろね。
史郁だけじゃない、来て欲しくもない人も、来ちゃいましたからね」

『……あ……来たか?』

「はい。聞いていた以上の強者でした」

『……だよな』

淡々と話す輝さんと、電話越しだというのに大きな声のせいで全て聞こえてくる誠吾兄ちゃんとの会話。

会話の最中、輝さんは何度か私を気遣わしげに見た。

ふたりの会話を聞いていても、ちっとも理解できない私は、ただ輝さんを見つめているだけだ。

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