極上の他人


「輝さん、今日はふみちゃんを連れて帰るって決めてるみたいだから、私ひとりでみんなと飲むことにする。ふみちゃんはせいぜい狼さんに食べられないようにね」

「食べられないようにって……え、えんちゃんっ」

私に背を向けて、ひらひらと手を振る後ろ姿は震えていて、笑っているんだろうとすぐにわかる。

足早に遠ざかる彼女を追いかけようとすると、途端にぐっと引き寄せられたのは輝さんの胸の中。

「あ、あ、離して……艶ちゃんが、」

私の視線を追って、輝さんは艶ちゃんを見る。

すっと目を細めたかと思うと、にやりと笑い、更に強く私の体を抱き寄せた。

「あ、史郁に代わりますけど、これからは俺が史郁の側にいるんで大丈夫です。誠吾先輩はあの人の家族に……はい、そうです。お願いします」

どうしてだろう、誠吾兄ちゃんの声が聞こえない。

スマホの向こう側から大声で叫んでいたはずなのに、いつの間にか何も聞こえてこなくて、輝さんだってどこか落ち着いた声で話している。

というよりも、かなり真剣な表情で話している。

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