極上の他人
平日の毎日、輝さんのお店に顔を出して食事をいただいて、そして家まで送ってもらう。
そんな毎日に慣れてしまって、それに比例するかのように私の気持ちもどんどん輝さんに抱え込まれていく。
「お疲れ様。美人が二人並んで歩いて、ナンパされなかったか?」
カウンター席に着いた途端、冗談めいた声で輝さんは笑った。
「いえ、ナンパなんて、されません」
「そうか、ならいいけど」
安心したように笑った輝さんに、艶ちゃんはあら?と言いながらスツールに腰掛けた。
「飲みにでも行こうって声をかけられたのはナンパじゃないの?」
「え?あれは、別に私に声をかけたんじゃなくて、艶ちゃんの事が気に入った男の人だから……」
「へえ。ふみちゃんに連絡先教えてくれって何度も聞いてきたのは私の誤解かなあ?」
「え、艶ちゃん、あれは、たまたま私が艶ちゃんの隣にいたからで……」
「ふうん。俯くふみちゃんの顔を覗き込んで何度も聞いてくるのもたまたま、なのかな?」
「も、もういいでしょ?」
からかいながらくすくすと笑っている艶ちゃんに強い口調でそう言うと、艶ちゃんは肩をすくめた。