極上の他人


「私も名刺をもらったけど、どうしよっかな。今は仕事も忙しいし、パスだな、やっぱり」

「うん。パスだね、パス」

ふふっと笑いながらビールに手を伸ばすと、目の前に輝さんの手が差し出された。

「え?輝さん?」

「名刺。俺が処分しておくから、出せ」

低く重い声に視線を上げると、口元を歪めた輝さんの顔が私に向けられていた。

目の前にある輝さんの手は、催促するようにひらひらと動かされている。

「もういらないだろ?名刺、出して。俺がシュレッダーにぶち込んでおくから」

「あ……はい」

そんなに私がナンパされたことが気に入らないんだろうかと不思議に思いながらも、輝さんの語気に気圧されるように鞄から名刺を取り出していると。

「あ、……」

さっきもらった名刺を手にした途端、鞄からポロリと落ちた白い紙が、私が座っているスツールの足元に舞った。

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