極上の他人
急いでいたせいか、少し崩れているけれど綺麗な文字。
「風間真奈香ちゃん……。いいなあ、女子高生。肌も綺麗だったなあ」
ぽつりと呟いた私は、小さくため息を吐いた。
女子高生っていうブランドだけで毎日が楽しそうだ。
真奈香ちゃんのメアドと電話番号が書かれているメモを再び鞄に戻そうとすると、不意に伸びてきた輝さんの手が、それを阻んだ。
「え?」
視線を上げると、私の手からすっとメモを取り上げた輝さんが、それをじっと見つめていた。
ナンパの話が出てからずっと不機嫌な顔を隠そうともしない輝さんだけど、今目の前にあるその表情は、不機嫌というよりも、どこか不安げに見える。
引き締めた唇には、色が変わるほど力が入っているし、メモに見入るその瞳は瞬きすら忘れているようだ。
「輝さん……?」
思わず呟いた私の声にも気づかないまま、メモを見ている。