極上の他人


輝さんの傍らにいる千早くんも、その様子に違和感を覚えたのか輝さんとメモを交互に見遣る。

「輝さん、その風間真奈香って女の子のことを、知ってるんですか?」

艶ちゃんが輝さんに声をかけた。

何か含みを感じるその声音が気になり艶ちゃんを見ると、どこか探るような横顔があった。

お店に来た時からずっと見せていた私をからかうような表情とは打って変わった、真面目な視線で輝さんを見ている。

「艶ちゃん?」

輝さんも艶ちゃんも、様子がおかしい。

真奈香ちゃんからもらったメモを見た途端、輝さんの様子が変わったような気がするけど、きっとそれは私の勘違いじゃない。

艶ちゃんが尋ねたように、輝さんは真奈香ちゃんの事を知っているんだろうか?

輝さんと真奈香ちゃんとの間に接点があるのか戸惑う私を見ながら、輝さんは曖昧に笑顔を浮かべたままだ。

「そうか、史郁は女の子にも人気があるんだな」

あきらかに冗談だとわかる言葉。

この場の空気を変えるようにごまかされたと感じる。

それ以上私達が何も聞かないように線引きする口調に、艶ちゃんも、それ以上何も聞こうとしない。

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