極上の他人
あの助手席には誰でも座れるとわかっていたはずなのに、やっぱり苦しい。
輝さんと真奈香ちゃんがどういう関係なのかはわからないけれど、二人が一緒にいたほんの数分だけでも、そして、遠目で見ているだけでも、かなり親しい間柄だとわかった。
お互いを見遣る視線だけでわかる。
そして、今日初めて会ったわけではないと思える空気感。
「そっか……知り合いだったんだ。……やっぱりね」
わかっていたような気がする。
輝さんと真奈香ちゃんに繋がりがあると、どこかでわかっていた。
『虹女の女の子からもナンパされるなんて、さすが史郁だな』
この前、真奈香ちゃんからもらったメモを見た輝さんが漏らした言葉を聞いた時から、そうじゃないかと思っていた。
女子高生からナンパされた、としか艶ちゃんは口にしなかったのに、輝さんは『虹女』とはっきりと言って笑っていた。
聞き流しそうになったけれど、輝さんの言葉全てに神経質になっていた私は、それを聞き逃せなかった。
それまでの会話を何度も思い返したけれど、虹女という言葉はどこにも出てこなかった。
おまけに、輝さんのお店からはかなり離れている虹女の名前が出るのは、どう考えても不自然だ。