極上の他人


「来週、葉乃の5歳の誕生日なの。だから、葉乃をかわいがってくれる人たちにお願いして、ビデオにお祝いの言葉を言ってもらっているんだけどね、ふみちゃんのことが大好きな葉乃のために、お願いできない?」

両手を顔の前で合わせ、私に頭を下げる亜実さん。

ひとり娘の葉乃ちゃんのためにビデオレターを作るなんて、本当にいいお母さんだな。

普段も仕事で忙しいのに、毎日幼稚園に持っていくお弁当を作って、自転車を飛ばして幼稚園まで連れて行っているらしい。

仕事で遅くなる時にはやむを得ず近所に住むお母さんにお迎えをお願いしているらしいけれど、優しくて頑張り屋のお母さん。

私も何度か亜実さんの自宅に呼ばれて食事をごちそうになったことがある。

その時に葉乃ちゃんと仲良くなって、時々電話でおしゃべりしたり、休日は一緒に公園で遊んだりしている。

幼稚園がとても楽しくて、同じ組の『つっくん』という男の子が大好きだという秘密も教えてもらった。

そうか、葉乃ちゃんの誕生日だったんだ。

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