極上の他人


「葉乃ちゃんのお誕生日なら、いくらでも協力しますけど、でもわざわざ亜実さんのお宅に伺わなくても、会社でもいいですよ?それに、葉乃ちゃんにばれないですか?」

「あ、今日は幼稚園のお泊り保育に行ってるから大丈夫なのよ。旦那も出張で泊まりだから、気にしないで」

「あ、そうなんですか……」

「おいしいワインもあるから、どう?」

私は、にやりと笑う亜実さんにつられて、思わず頷いた。

おいしいワインも魅力だし、大好きな亜実さんのお誘いを断るなんてできない。

おまけに、夕方目撃してしまった輝さんと真奈香ちゃんの姿が頭から離れなくて、私の気持ちは落ち込みっぱなし。

ふっと気を緩めると、途端に浮かぶのは真奈香ちゃんを乗せた輝さんの車が遠ざかっていく様子だ。

痛む心を抱えたまま立ち尽くすだけだった。

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