極上の他人


「じゃあ、仕事が終わったら声をかけてくれる?私はいつでも大丈夫だから」

「はい、わかりました。もう少しで終わるので、声をかけますね」

「了解。……あ、このクロスの品番、確認した方がいいかも。展示場に使うものなら、もう少しオーソドックスな色合いを入れるはずなんだけどな」

「え?」

私の机の上にある資料をちらりと見た亜実さんがふと呟いた。

展示場の仕様書の一部を見て、怪訝そうに首を傾げている。

今日打ち合わせで決まった内容を仕様書に入力していたけれど、もしかしたら間違った品番を入力したんだろうか。

「あ……この品番は、えっと」

亜実さんの問いに、慌てて元資料をひっくり返す。

打ち合わせで決まった内容を記したページを開き、確認すると、確かに亜実さんが言っているように私が入力した品番は間違っていた。

ZとWを打ち間違えている。

「すみません……私が間違った品番を入力していました……。そうですよね、Z品番を展示場に使うなんて、めったにないですよね」

私は慌ててパソコンの画面に必要な資料を呼び出し、入力し直した。

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