極上の他人


輝さんのことを考えないようにと、必死で仕事に集中していたつもりでも、結局ミスをしているなんて。

このミスに気付かずに営業部に資料を回していたら、と思うとぞっとする。

多分、営業部での確認で見つけられるミスだろうけど、もしもそのまま誰にも気づかれないまま発注なんて事になっていれば。

かなりの経費がかさんで、大きな問題になっているはずだ。

「亜実さん、ありがとうございました。私、このままこの資料を回すところでした」

立ち上がり、亜実さんに大きく頭を下げた、

もしも、と考えると、どきどきしてくる。

本当に、亜実さんには感謝だ。

「ふふっ。いいのよ。これも年の功っていうのかな?勘が働くっていうか。というよりも、私もこんなミス、何度かやって怒られたことあるからね」

私の顔を覗き込んで、優しく笑ってくれた亜実さん。

「私が新入社員の頃なんて、ふみちゃんみたいに優秀じゃなかったもん。展示場の仕様を採用されるなんて夢のまた夢だったし、営業の人と差し向かいで打ち合わせなんてできなかった」

「そんなこと、信じられないです」

私は驚いて大きな声をあげた。

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