極上の他人
女性社員たちの憧れの人である亜実さんの優秀な仕事ぶりを良く知っているだけに、信じられない。
「んー。でも、本当なのよね。私なんて、才能ないから努力努力努力。必死で勉強して失敗して怒られて。ようやく今のポジションにいるって感じ。ふみちゃんが私と同じだけ努力して勉強したら、私よりも早く管理職になれるわよ」
「まさか……」
「ううん、本気も本気。私は努力と涙の結果で、今のポジションにいるけど、ふみちゃんには持って生まれた才能とセンスがあるから、その分他の仕事にも気持ちを向ける余裕もあるだろうし、将来が楽しみだって……ふみちゃんは、課長たちの希望の星だよ」
大きな笑顔を私に向けたあと、亜実さんは自分の席へと帰って行ったけれど、残された私は、亜実さんから聞かされた言葉を何度も反芻し、そしてやっぱり信じられなくて。
「希望の星どころか絶望の星なんだけどな……」
輝さんを偶然見かけて以来、落ち込み続けている私のどこにも希望なんてないのに。
落ち込みそうになる気持ちを忘れようと必死で仕事に集中して、そして品番を間違えて亜実さんに指摘された。
こんな私のどこが希望の星なんだか。
亜実さんのように、幸せな結婚をして、かわいい子供を産んで。
そして仕事でも着実に実績を上げている、そんな女性こそ希望の星だ。