極上の他人


「もちろん私も子供はあと何人でも欲しいけど、授かれないのなら仕方がないし。治療を続けて落ちこんで、葉乃の可愛い盛りを見逃すのはもったいないなあって思ったら、なんだか目が覚めたっていうか、今ある幸せを大切にしようって、そして強くなろうって思ったのよ」

「強く……?」

「そうよ。強くならなきゃ。たぶん、子供を何人も育てているお母さんはそれだけで毎日忙しいし大変だろうと思う。もちろん経済的にもね。それはよくわかるんだけど、一人っ子の親だって大変なのよ。兄妹同士で励まし合ったり解決したりできることでも、一人だと母親が気をつけなきゃならないし、それに、将来この子は一人で大丈夫だろうかって不安もある。それに、一番大変なのは精神的なこと」

苦笑しながら、亜実さんは私に視線を向ける。

言おうかどうしようか、逡巡し、視線も泳いでいる。

それでも、やっぱり、というように息を吐くと、ほんの少し気合を加えたような声で呟いた。

「一人っ子はかわいそうだって、そういう周囲からの視線と言葉に耐えられるだけの気持ちと、それを平気で笑い飛ばせる強さが、必要だなって、気付いたの」

ふみちゃんにはよくわからないよね、と肩を竦める亜実さんは、今日見た中で一番綺麗な笑顔を見せてくれた。

亜実さんにとって、手元にある薬袋は既に負の感情を呼び起こすものではなくて、前向きに人生を考えるものに変わっているように思える。

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