極上の他人
輝さんが塾の先生だったとしたら、女の子たちは「ひかるセンセー」なんて言いながら目をハートにしていたかもしれない。
女子高生たちに囲まれて苦笑している輝さんを想像すると、今も『マカロン』でたくさんの女性客と楽しげに話している輝さんの姿と重なって、ずん、と落ち込んだ。
「あ、あ、ごめん、私、虹女って聞いたから、てっきり輝くんがふみちゃんにあのことを話したんだとばかり思って……。ごめんなさいね。あ、でも、ご、誤解だから。
そう、輝くんと虹女の女の子はなーんにもないない、ないから」
目の前の亜実さんは、大きな声で私にそう叫んでいるけれど、何がどう誤解なのかがしっくりこない。
だけど、輝さんが塾の先生をしていた時に、生徒を誘惑したとか、声をかけたとか、ありえない。
それだけは、信じられる。
「本当、出しゃばったことを言っちゃって、ごめんね。でも、輝くんだって、そのうち話そうって思ってるはずだから」
「……いえ。輝さんは、あまり自分のことは話さない人だし。私は輝さんにとっては妹のようなものだから……」
そう。輝さんにとって私は、留守中の誠吾兄ちゃんから頼まれただけの、手のかかる妹のようなもの。
学生時代世話になったという誠吾兄ちゃんへの恩返しのようなものだろう。