極上の他人
「ふみちゃん、妹なんて、違うよ。だって、ふみちゃんのことをこんなに大切にしてるんだから、それは違う」
焦る声で慌てる亜実さんの言葉に頷くことができれば、どれだけ楽だろう。
私だって、輝さんに大切にしてもらっているとは思うけれど、それでもやっぱり、妹のような存在なのかな、と思う。
「虹女の女の子とのこともそうですけど、私、何も知らないんです。
私と一緒にいない時の輝さんのことを、全然知らない。
今、恋人がいるのかどうかも、そして、どうして私を気遣ってくれるのかも」
「恋人ねえ……。まあ、今まで何もなかったとは言わないけど……。いいオトナなんだから、ない方がおかしいし」
亜実さんは、何かを思い出すように苦笑した。
きっと、輝さんの過去の恋愛を頭に浮かべているんだろうけれど、もちろん私は何も知らない。
私自身が輝さんのことを聞こうとしなかったから当然だけど、輝さんも何も教えてくれようとはしなかったし。
輝さんと出会ってから、思いがけない展開の日々についていくだけで必死だったせいか、輝さん自身のことに気持ちを向ける余裕もなかった。
おまけに、輝さんのことを何も知らないまま側にいることに違和感を覚えつつも、どうしても自分から離れることはできなかった。
輝さんには恋人がいるだろう思いながら、そして恋人だろう人の姿をお店で見かけたというのに。