極上の他人
今、私の手をぎゅっと握りしめている力と熱を信じてもいいのかもしれないと、気持ちは揺れる。
輝さんの事が好きだという気持ちに素直になっても大丈夫……そう自分に言い聞かせながら、輝さんの手をぎゅっと握り返した。
自分からそんなことをするなんて、これまでなかったかもしれない。
否応なく顔が熱くなるけれど、繋いだ手を見つめていると、不思議とこれが自然なことのように思えてくる。
「史郁、かわいい」
ぽつりと耳元に落とされた輝さんの言葉に、更に体全体が熱くなる。
そっと視線を合わせると、私が欲しいという気持ちが露わで優しい瞳が私を射る。
「かわいくなんか……ない」
恥ずかしさで赤いに違いない私の頬を、繋いでいない方の手ですりすりと撫でて、輝さんはのどの奥を震わせた。
「かわいいよ」
そんな、部屋の温度が上昇しそうな甘い言葉に包まれて、私が何も言えずにいると。
「やだ、ここは私の家なんだからね。輝くんの店でも家でも好きなところに行って思う存分いちゃついてよね」
ほれほれ、とばかりに手を振って輝さんに舌を出した亜実さんは、「あー、やってらんない」とぶつぶつ言いながら、ふと思い出したように私に向き直った。