極上の他人
「ほらね、輝くんはふみちゃんのこと、大好きなんだから、虹女の女の子のことなんて気にしないで、どーんと甘えてきなさい」
「え……?虹女の女の子って……?」
亜実さんの言葉にはっと反応した輝さんは、小さな声でそう呟くと、視線を私に向けた。
「史郁、虹女って……」
「え、あの……」
私の顔を覗き込む輝さんの視線の強さに気圧されて、思わず口ごもる。
触れられたくないことに触れてしまったのかと、後悔しても後の祭り。
輝さんは私からの答えを聞くまでは引き下がらないとでもいうように目を細め、無言で私を射る。
「気にしていたって、どういうことだ?」
低い声が部屋に響き、その様子が甘いものではないという事にようやく気付いた亜実さんが、慌てたように声をあげた。
「ちょっと輝くん、そんな怖い顔しないでよ。私が虹女の女の子のこと、つい口を滑らせちゃったのよ。塾をやめたことをつい、ね」
「塾のことを?つい?」
「そ、そんな怖い顔しないでよ。ごめんごめん。ふみちゃんが虹女って言葉に反応したから輝くんから聞いてると思ってつい」
亜実さんは申し訳なさそうに言って、何度も頭を下げた。