極上の他人


「ふみちゃんもごめんね。輝くんが女子高生に手を出すなんてショッキングなことを聞かされてびっくりしたでしょ。それに輝くんから聞きたかったよね」

「あ……いえ。えっと……」

亜実さんの言葉にどう答えていいのかわからなくて、私はちらりと輝さんを見た。

私が『虹女』という言葉に反応したのは、輝さんが真奈香ちゃんと一緒にいる姿を見かけたせいで、輝さんが以前働いていた塾で女子高生に手を出したという話を聞いたからではない。

もちろん、そのことにショックを受けなかったといえば嘘になる。

女子高生に手を出したことを理由に塾の講師を辞めさせられたのならそれは大問題だけど、輝さんがそんなことをしたなんて信じられない。

以前塾で働いていた事はお見合いの釣書にも書いてあったし、それが事実だとしても。

「輝さんは生徒に手を出すなんてこと……しない」

思わず口を突いて出た言葉は私の本心。

願望ではなく、確信。

気持ちが読めない、無表情の輝さんを見つめながら、私は呟いた。

忙しい仕事を放りだしてまで私を気にかけてくれる輝さんを知れば知るほど、その懐の深さに取り込まれた。

「私は輝さんのことを信じてます」

輝さんの視線に自分の視線をしっかりと絡ませてそう呟いた私に、輝さんはほんの少しだけ表情を緩めた。


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