極上の他人
真奈香ちゃんに何かがあれば自分が守るとでもいうように、私達を厳しい視線で見ている立ち姿はたくましく、母親の愛情が強く感じられる。
娘を大切に、そして心から愛しているんだと一目でわかる、そして私たちを敵視しているような空気を漂わせているのは絵に描いたような母親そのものの姿だ。
ほんの少しでも、真奈香ちゃんが傷つく気配を感じたらすぐに彼女を守るように、周囲に気を配っている。
ああ、この人は、こんな表情もできるんだ。
父さんといつも言い争い、その顔をゆがませ般若のような恐ろしい口元で私を睨みつけていた彼女とはまるで別人だけれど。
右目の目じり横にある小さなほくろ、そしてふっくらとした厚めの唇。
何より私に似ていると誰もが思うに違いない容姿が証明するもの。
それは。
『おかあさん』
口に出して呼ぶことは拒まれるに違いないと察し、心の中だけでそう呟いた。
幼い頃、『おかあさん』と何度呼んでも振り返ってはくれなかった人。
私を『いらない子』とはっきり言って、抱きしめることも、気遣うこともしなかった人。
そうか……私のお母さんではなく、真奈香ちゃんのお母さんだったのか。
「ふ……ふふっ……」
思わず漏れた笑い声。
本当に私の声なんだろうか。
真奈香ちゃんを愛していると一目でわかる姿を見せつけられて、そして、私には微かな優しさも温かさも見せない彼女から目をそらし、私は輝さんの胸に顔を埋めた。
目の前に突然つきつけられた現実は、私が覚悟し受け入れていたものよりもはるかに私を傷つけ、幼い頃の苦しみを何倍にも大きくして再び襲い掛かる。