極上の他人


見かける度に、彼女の輝さんへのあからさまな好意がエスカレートしている気がする。

同じテーブルに座っているお友達らしき女性たちは、優貴さんと呼ばれるその女性を応援するような視線を輝さんに向けている。

彼女が絶えず輝さんにボディータッチしている仕草は自然に見えるけれど、同じ女の目から見れば、それは確実に計算されたものだとわかる。

恋愛経験の少ない私にもそれくらいわかるんだから、輝さんなら絶対見抜いてるはずなのに、決して嫌そうな顔をしていない。

結局、輝さんも彼女を気に入ってるんだな。

そういえば、先週も輝さんは彼女と仲良く話していた。

20代後半の落ち着いた雰囲気。

テーブルからはみ出ている足の長さを見れば長身だとわかる。

それだけではなく、モデルのように整った顔。

輝さんの腕にさりげなく置かれた指先にはきれいなネイルアート。

そこには何故かリボンが盛られていて、日常生活に不便はないのかと首を傾げそうになる。

そんなことを考えること自体、私には女子力が不足しているのかもしれないけれど、今の私は指先を整えるくらいじゃ、あの女性の足元にも及ばない。

彼女なら、見た目が整っている輝さんと並んでも余裕で笑顔を作れそうだし、対等に話もできそうだ。

私が輝さんに距離を感じるのは、年下だからという理由だけではなく、それ以上の何かがあると実感して胸に痛みを覚えた。



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