極上の他人
千早くんと話せば気持ちは浮上するかもしれないけれど、気付いたばかりの輝さんへの思いを簡単に見抜かれてしまいそうだ。
今日はこのまま退散しよう。
ずっと気づかない振りをしていたけれど、私はとっくに輝さんに惹かれていたんだ。
多分、初めて出会った、あのお見合いの日からずっと。
けれど、可愛い女の子、というポジションを輝さんの中に確保してしまって、落ち込む感情を、隠す自信がない。
そんな私の気持ちを知れば、千早くんも困るだろうし、同情されるのも嫌だ。
だから、やっぱり帰ろう。
そして、来た時よりも重く感じる扉を押して、お店から出ようとした時。
ドアノブに置いていた私の手を包む熱い体温を感じた。
え?
振り向くと、怪訝そうな顔をしている輝さんがいた。