極上の他人
そして、与えられた仕事を必死でこなし、お客様と接する機会も増えてきた今、誰もが越えなければならない山を越える時期がきた。
入社して以来、設計部や営業部の先輩の指示のもと、お客様が求めている家の設計補助をしてきたけれど、そろそろひとり立ちをしなければならない。
営業から回されるお客様からの要望を図面にする過程を、一人ですることになった。
設計担当なら誰もが通る道で、私が全てを任される時期も特に早いものではない。
いずれはそうなると覚悟はしていたけれど、図面の右下に『担当:京極史郁』とサインした時は不安で指が震えた。
お客様の要望や、建設地の法律的な制限を考慮しながら描いた図面を上司に提出し、その回答がなされるのが今日。
……ああ、胃が痛い。
精一杯注意をはらい、これまで得た知識を総動員して描いたとはいえ、不安な気持ちを消すことはできない。
輝さんは、朝から必要以上に緊張している私を見かね、「あの場所に連れて行ってやる」と言ってくれた。