極上の他人


あの場所とは、以前私が住んでいたじいちゃんとばあちゃんの家。

自分の気持ちを落ち着かせたい時に行く、おきまりの場所だ。

『俺はここで待っているから一人で行ってこい』

駅前で私をおろした輝さんにそう言われ、坂道を上った。

そして、気持ちを鎮めた私を会社まで送り届けてくれる愛しい人。

運転席の横顔は、いつも通りの男前。

新しいお店でもその笑顔が女の子に人気だと、千早くんから聞いた。

できればお店に出て欲しくはないけれど、オープンしたばかりのお店を軌道にのせるまではそういうわけにもいかず、私も諦めている。

まあ……楽しそうに仕事をしている輝さんは素敵だから、仕方がない。

我慢しよう。

塾の講師を辞めたあと、親戚が経営していた『マカロン』を成り行きで引き継いだというけれど、意外にもそれが天職だったらしい。

真奈香ちゃんとの関係を誤解されたことにより不本意な思いで塾をやめたけれど、お店の経営を心から楽しんでいる輝さんにとっては、吉と出たようだ。

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