極上の他人
引きずられながら目に入ったのは、さっきまで輝さんが楽しそうに話していた『オレンジ』の女性の鋭い視線で、まるで私を殺してしまいそうに睨みつけていた。
きっと、輝さんが私に構うことが気に入らないんだろう。
気にする必要なんて、ないのに。
そんな自嘲気味な気持ちが心を満たす。
そして、輝さんの力に抗うことなく椅子に座ってみれば、いつもの見慣れた視界が目の前にあった。
「はい、とりあえず水でも飲んで落ち着いてごらん。すごい顔してるよ」
そう言って、千早くんは私の手元におしぼりとお水を置いてくれた。
そして、にっこり笑って私を安心させてくれるように頷いてくれたけれど、無理矢理カウンターに座らされた私には何もかもが突然で、千早くんにも苦笑しか返せない。
「ありがとう」
緊張を解こうとお水を飲んで小さくむせていると、私の背中を優しく撫でてくれる温かさを感じた。
ぴくりと身体を震わせて視線を上げると、輝さんが、心配そうに私の顔を覗きこんできた。
「何かあったのか?」
目の前に現れた輝さんの顔に、はっとする。
恋心を自覚した途端、まさにその恋心を向ける相手が至近距離にいて、どうしていいのかわからない。