極上の他人
「住宅展示場で将来を語り合うなんて、恋人同士には甘すぎるシチュエーションですからね。それに、その展示場の大きな池はかなり綺麗だし」
「ああ、池って史郁も書いてるな」
「そうなんです。夕方になると夕日が池に映りこんで……」
「ん?どうした?」
軽快に話していた千早が、突然口を閉ざし、何かを思いついたようににやりと笑った。
いたずらを企む子供のように口元をあげ、意味深に目元を細める。
「……な、なんだよ」
「んー。いや。別に。……というより、明日、必ずその展示場に行ってくださいね」
「は?」
「じゃなきゃ、史郁ちゃんの努力が報われませんよ」
千早は一語一語ゆっくりと言い聞かせるように話すと、すっと真面目な顔を作った。