極上の他人
設計に携わるものなら一度は欲しいと願う賞を、史郁が受賞したと書かれている。
時々店に来る、史郁の会社の先輩である亜実さんも数年前に受賞したという大きな賞を史郁が獲った。
「あいつ……仕事仕事って頑張って、ようやく報われたな」
そう。
幼い頃から両親の愛情に恵まれず、寂しく苦しい日々を過ごしていた史郁は、とにかく自分の力で幸せを手に入れようと、仕事に全てを捧げている。
俺に頼ればいいのに、と思わないでもないが、それが史郁の望む幸せではない。
地に足をつけて、ちゃんと自分の力で生きていくことが幸せだと、わかっているからこそ仕事に集中し頑張っている。