極上の他人
私に触れる指先からは、毎夜私の体に染み渡る艶も妖しさも、熱も何も感じられない。
オンナとしての私ではなく、輝さんが私を初めて知ったという小学生の頃の私に対する仕草のようだ。
何の下心もない、ひたすら私を励ますような動きに呼応するように、私にも笑顔が戻る。
輝さんに優しくされると、私はいつもこうだ。
強張った身体も心も、一瞬にしてゆるゆるにされる。
それを心地よく感じるほど、私は輝さんに溺れている。
「だけど、夫の俺にすら見せられない仕事を家ですすめていいのか?っていうより、紙きれ一枚も机にないけどどうなってるんだ?仕事になるのか?」
ふと気づいたかのような低い声。
私のことを心配しているように聞こえて、くすぐったい。
それに、結婚前、私を守ると言っては寄り添ってくれていた頃の声音を思い出して胸がきゅっとなる。