極上の他人


私の胸の鼓動が輝さんに聞こえたのか、意味深な笑顔を浮かべた輝さんの体が、私の体に覆いかぶさってくる。

仰向けに寝転ぶ私の顔の両側に肘をついて、すっと唇を重ねる。

小さなリップ音が部屋に響いて照れくさい。

でも、やっぱり嬉しくて、ついつい私からも顔を近づけてリップ音を再び鳴らした。

そして、輝さんの瞼に指先で触れた。

「資料自体は会社から何も持ち出してないの。今日一日睨みつけていた資料なら頭の中に入っているから、それを思い出しながらパソコンで図面を描いていたの」

「そうか。頑張ってるんだな」

「うん。お客様も一生に一度のことだから。家を建てる意気込みには応えなきゃ。頑張るよ。……無理難題ばかりのお客様だから、営業も頭抱えてるけど」

私も頭が痛いんだけど、というのは胸にしまっておく。

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