極上の他人
これまで何度も甘い言葉を囁かれて、蜜な夜を幾度も過ごしているのだから、輝さんが私を愛してくれているのはわかっているけれど。
「そ、そんなにストレートに言われると、私、いっぱいいっぱいで……」
嬉しさと照れくささがないまぜになった心境で、焦りを隠せない。
輝さんに甘やかされる度、自分が弱くなっていくようで不安になる。
私はかなり愛されて慈しまれて、そして輝さんという無敵の旦那様に守られながら仕事に集中できる。
それはそれで幸せに思えるし、手放したくないものだけれど。
「……私、もう一回『設計デザイン大賞』を目指そうかな」
「は?もう一回?」
「うん。もちろん、前回受賞した時に経験した苦労は忘れてないし、簡単には獲れないと思うけど。このままじゃ、私」
じっと私を見つめる輝さんに、自分の思いをそのまま伝えていいのか、迷う。
輝さんが求めている私、というものから外れてしまいそうで、躊躇する。
私はすっと視線をそらし、唇を結んだ。
すると、輝さんがなんてことのないような軽い口調で呟く。
「このままじゃ、……自分が弱くなりそう、か?」