極上の他人



「そうやって、自分の気持ちを素直に言えるほど、史郁は強くなったんだな」

「え?」

嬉しそうな声音に、私は首を傾げた。

「自分の気持ちや本音を隠して、周りに気をつかってばかりだったのに、こうして仕事の愚痴や不安を口にして、それに、俺を喜ばせる言葉も言えるようになったんだ。
無意識だとしても、言っても大丈夫だって、自信が持てるからそう言えるんだ。
それは、強くなったってことだろ?」

「んー、……よく、わからない」

「そっか、わからないか。なら、それでもいい。俺は、史郁がこうして俺の側にいればそれでいいから」

そう言うが早いか、輝さんは私を抱きしめる。

輝さんの首筋に、慣れたようにぱふっとおさまる私の顔。

いつものように、体重を預けて浅い呼吸を繰り返す。

輝さんの体温と匂いに気持ちが落ち着くのがわかる。

その背中に腕を回し、「コーヒー飲もうかな。シュークリームも食べたいし」とくぐもったこえで呟いた。

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