極上の他人
「あ、私の今の一番の悩みを言ってもいいかな?」
「ん?なんでも言っていいぞ。俺がこうして側にいれば百人力だろ?」
「ふふっ。百人は無理だと思うんだけどね」
控えめに、それでいて焦らしながら話す私に、輝さんは訳が分からないとでもいうように顔をしかめた。
「百人って、そう意味じゃないだろ?」
「うん。それはわかってるんだけど。今は一人なの」
「は?」
「だからね、一人、なの」
これだけで輝さんに通じるのかどうかわからないけれど、きっと通じるはずだ。
私の心の機微には敏感な人だから。
それに、口には出さないけれど、輝さんが今一番欲しいと願っているもの……ううん、一人、がようやく、ようやく、なのだ。
しばらくお互いに見つめ合って、探るような視線を交わし、無言の会話を続けた。
そして、何かに思い至ったのか、はっと目を見開いた輝さんは、その思いをかみしめるように天井を仰ぐと、くっと唇を引き締めた。